未破裂脳動脈瘤の治療

開頭手術

開頭手術を行って動脈瘤の頸部をチタンなど生体親和性の良い金属で作られた小さなクリップで閉塞させるクリッピング術、動脈瘤をゴアテックスやモスリン等でできた布で覆う動脈瘤ラッピング術、バイパス術を併用して動脈瘤を親血管ごと閉塞してしまうトラッピング術等があります。

血管内手術

血管撮影の装置のもとで血管の中から小さな白金のコイルやラテックスでできた風船をいれて閉塞する方法。

慎重な経過観察

医学的リスクファクターをなるべく低くしながら半年ー一年毎にMRAやCTA、脳血管撮影などを行って経過を観察する方法。

治療にともなう危険性

その危険性について様々な報告があります。一般的には1センチ以下の未破裂脳動脈瘤であれば手術により何らかの合併症が出現する可能性は3〜4%、死亡率は1%未満と報告されています。しかしこれは術者や施設によりばらつきがあることが報告されていますし、また瘤の部位、形状、大きさ、患者さんの全身状態にも関係すると言われています。先の国際共同研究ISUIAではこの合併症が極めて高く13%以上と報告されました。これは私たち日本の脳神経外科医の常識とは非常に異なるものであり、本邦におけるしっかりしたデータの集積が求められています。これまでの研究によるエビデンス

日本における未破裂脳動脈瘤治療数

日本においては現在年15000例以上の未破裂脳動脈瘤が治療されています。その数は年々増加しています。同時に約18000例の破裂脳動脈瘤の治療が行われています。破裂動脈瘤治療数は年々すこしずつ減少しており、10年間で約1000例減少しています。(社団法人 日本脳神経外科学会調べ)
現時点では未破裂脳動脈瘤の約30%は血管内コイルで治療を受けています。現在どれくらいの患者さんが治療を受けずに経過観察されているかというデータはありませんが、ほぼ治療数と同等またはやや多い数の患者さんが治療を受けずに定期的経過観察を受けていると考えられます。

日本における脳動脈瘤治療数
  破裂脳動脈瘤 未破裂脳動脈瘤
年度 クリッピング コイル治療 クリッピング コイル治療
2000 17,162 7,689
2001 17,373 1,805 7,999 1,553
2002 17,396 1,934 8,540 1,486
2003 17,012 2,441 8,817 1,932
2004 16,668 2,698 8,588 2,019
2005 15,944 2,998 8,755 2,377
2006 15,635 3,463 8,839 3,053
2007 15,252 3,833 9,544 3,621
2008 14,679 4,136 10,116 3,909
2009 14,512 4,246 10,001 4,134
2010 13,607 4,440 10,846 5,162
※2000年は血管内治療数データなし


(社)日本脳神経外科学会データ
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